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高齢者の栄養と評価

日本の高齢化した社会、そして高齢者のおかれた環境をふまえた上で、
高齢者の栄養評価についてご説明いたします。

超高齢社会

高齢者とは
  • WHOは、暦年齢で65歳以上を高齢者と定義しています。
  • 65歳以上を10歳毎に区分けし、
    ・65歳から74歳までを前期高齢者(Young Old) ・75歳から84歳までを後期高齢者(Old Old) ・85歳以上を超後期高齢者(Older Old) と、呼ぶことがあります。
超高齢社会
  • 超高齢社会という言葉をご存じでしょうか。
    ・高齢化社会: 高齢者の割合が、総人口の7%~14%未満の社会 ・高齢社会: 高齢者の割合が、総人口の14%~21%未満の社会 ・超高齢社会: 高齢者の割合が、総人口の21%以上の社会
  • 日本は2007年に、かつてない高齢化が進んだ超高齢社会となりました。
主要先進国における人口高齢化率の長期推移・将来設計 主要先進国における人口高齢化率の長期推移・将来設計
社会実情データ図録( http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/1157.html )
MNA® Basic:Nestle nutrition,2010
  • このグラフは、主要先進国の1850年から近未来2050年までの、200年間におよぶ高齢者人口比率の変化を示したものです。横軸が西暦、縦軸が比率(%)で表された高齢者人口比になります。
  • 先進国の多くは、高齢化社会の「化」の字がはずれるのに1世紀以上を要する傾向を示しています。
  • 一方、我が国での高齢化社会は1970年、高齢社会へは1994年と、四半世紀を経ずに高齢社会になっています。さらに、超高齢社会になったのは2007年で、この間7%の高齢者人口比の伸びに要した年数はわずかに13年でした。
  • 主要先進国において、2009年11月現在、唯一日本だけが超高齢社会になりました。
  • このように、我が国は人類史上いまだかつて経験したことのない、全く未知の領域である超高齢社会を経験しているという事実は重く、したがって高齢者の加齢、さらにはその背景にある栄養の問題を真剣に考えることが、人類における高齢社会の先陣をゆく日本において、きわめて重要であるといえます。
  • 高齢者人口が多い社会において、高齢者への栄養ケアは医療・介護従事者にとって重要な事項となっています。

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高齢者における栄養の特徴

  • 急速に超高齢社会を迎えた現在の日本において、高齢者の健康を支援するためには、生理機能評価だけでなく、機能面や社会的、精神面でも変化している背景を踏まえ、栄養的な特徴を把握することが必要です。
  • 栄養的視点から高齢者の特徴を見ると、以下のようなことが見えてきます。
    ・歯の脱落や咀嚼(そしゃく)筋力の低下により、噛むことがうまくできなくなります。 ・味覚の低下、特に塩味に対する閾値の上昇などがみられます。 ・口腔衛生の悪化や、食欲不振、消化・吸収率の低下が生じます。 ・複数の器質性疾患により多くの薬を服用する傾向があります。 ・社会的隔離や経済的問題も生じてきます。 ・何より特記すべき点として、個体差が大きくなり個別対応が必要になるため、
    栄養ケアを柔軟に考えることが必要となります。
高齢者の栄養的視点から見た特徴 高齢者の栄養的視点から見た特徴
Sullivan D.H, Annals of Long-Term Care,8:41-46,2000
MNA® Basic:Nestle nutrition,2010
高齢者に栄養アセスメントを行うメリット
  • 低栄養状態の高齢者の割合は、思いのほか高いと考えられています。
  • 低栄養状態の高齢者をアセスメントしないまま放置してしまうと、感染症の発症や、さまざまな合併症を引き起こすなど、やがて致命的となる可能性も否定できません。
  • 栄養アセスメントは、こうした高齢者のリスクを把握し、その予後を見越したケアをおこなうきっかけとなります。
  • 栄養アセスメントで導き出された問題点をもとに、栄養状態を改善する栄養介入や、治療方針を決定する際にリスクを回避する判断をおこなうことで、さまざまな合併症を防止し、予後を改善できる可能性があります。MNA®スコア別 栄養ケア
  • 高齢者のケアをおこなうすべての職種に携わる人が、栄養アセスメントの重要性を理解し、適切な栄養アセスメントをおこなうことがきわめて重要です。
栄養アセスメントを行うメリット 栄養アセスメントを行うメリット
MNA® Basic:Nestle nutrition,2010
栄養の負のスパイラル、正のスパイラルとMNA®
  • 高齢者に対して、定期的にMNA®で栄養状態を評価し、低栄養・At riskの高齢者に対しより早期に栄養ケアをおこなうことで、予測される危機の回避を期待することができます。栄養状態のAt risk
栄養 負のスパイラル   栄養 正のスパイラル 栄養 負のスパイラル 栄養 正のスパイラル
MNA® 高齢者の「栄養未来予想」,Nestle nutrition,2010
「栄養 負のスパイラル」
  • 低栄養から筋肉量が減少し、ADL(Activities of Daily Living)が低下すると転倒などのリスクが増加します。
  • また、免疫能が低下し、易感染性が高まります。
  • 一度この悪循環に陥ると、なかなかもとに戻せないことから、これを「栄養 負のスパイラル」と呼んでいます。
「栄養 正のスパイラル」
  • 低栄養が進行すると回復に時間がかかることから、早期の栄養介入が大切です。
  • また、介入後も栄養状態をある程度観察・評価することができれば、退院後に居宅管理となった場合でも、栄養ケアの継続が可能です。
  • MNA®から始まる栄養ケアは、エネルギーの摂取量を増やし栄養状態を改善します。

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栄養状態のAt risk

  • 栄養状態を評価するMNA®において、"At risk"という概念は極めて重要であり特徴的です。
  • たとえばA.S.P.E.N.*(米国静脈経腸栄養学会)のガイドラインでは、ほとんどの疾患の栄養ケアのガイドラインの冒頭に、「***の患者は、栄養障害のAt riskにある( patients are at nutritional risk )」とのコメントが載ります。この場合のAt riskの意味には、4つの意味があると考えられます。
     (1)すでに(確かに)栄養障害がある場合
     (2)いまは栄養障害はないが、これから栄養障害を起こすリスクがある場合
     (3)本当かどうかは確かでないが、栄養障害が"あるかもしれない"場合
     (4)逆に栄養障害が"ないかもしれない"場合
    の4つのシナリオです。
  • At riskとは一般的には実際に栄養障害がある(1)のシナリオを示しますが、MNA®の場合に注意すべき点は、At riskを将来なんらかの有害事象がおこる確率の高い対照群の判定にもこの概念を使っているということです。
  • たとえば入院中の場合、予定通りに退院しても半年後に再入院しているなどのアウトカム予想を、高い確率で出来ることを表わしています。
  • 言い換えれば、MNA®におけるAt riskという概念は、未来予想の指標といえます。

*A.S.P.E.N.;American Society for Parenteral and Enteral Nutrition

入院時の栄養障害の重症度とその後の死亡率 -3群間の比較 入院時の栄養障害の重症度とその後の死亡率 -3群間の比較
Kagansky N, et al. Am J Clin Nutr. 82: 784-91. 2005
MNA® Basic:Nestle nutrition,2010
  • 栄養障害の重症度と入院後の死亡率についての比較です。
  • 入院後1,000日間にわたる、栄養状態良好群、At risk群、低栄養あり群の3群間の生存率の比較を前向きに追跡した結果、グラフのように3つのカーブに分かれました。
  • At risk群は栄養状態良好群と低栄養群の2本のカーブの間に位置する生存曲線を示します。
  • さらにMNA®のAt risk群は、6ヶ月後の入院の確率を予測できるばかりではなく、1,000日後すなわち約3年後の生死の確率をも表しています。

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